高田馬場に、久しぶりに降り立った。
今日は前から気になっていたラーメン屋へ行くためだ。30年前、この街に住んでいた頃は、駅のホームで鉄腕アトムの音楽が流れていなかった、今のような“ラーメンの街”ではなかった。
向かったのは、あの「渡なべ」の新店「六坊」。開店10分前に着くと、すでに4人ほど並んでいる。少しだけ胸が高鳴る。
頼んだのは札幌味噌ラーメンブラック。ひき肉ともやし、ニンニクをたっぷり入れてフライパンで炒め、味噌と合わせた一杯。ブラックペッパーが効いていて、濃厚な味噌のコクに野菜の甘み、ひき肉の香ばしさが重なる。中太麺にしっかり絡み、ほどよい厚みのチャーシューもいいバランスで、素直にうまいと思った。
店を出たあと、時間があったので昔住んでいたあたりを歩いてみた。
変わらない景色の中に、新しい店や建物が入り混じっている。その違和感が、むしろ懐かしさを強くする。気づけば西早稲田の方まで足を伸ばしていた。18歳で上京して、初めて住んだ街。
今でも年に一度くらい、無性に懐かしくなって早稲田通りを歩くことがある。
当時、バイト先で気になっていた女の子が住んでいた坂がある。ずっと行ってみたかったのに、結局一度も行けなかった場所。
今日、30年越しで、初めてその坂を上った。
「こんな感じだったんだな」と思った。
実際に見てみると、特別な景色でもなんでもない。
でも、あの頃は違った。
もし坂の途中でばったり会ってしまったらどうしよう。そんなことを考えて、近づくことすらできなかった。
その記憶ごと、今日やっと回収した気がした。
そこから早稲田まで歩き、穴八幡宮へ。ここに来ると、なぜか「おかえり」と言われているような気がする。
さらに足を伸ばして神楽坂まで。昔、原付で何度も通った早稲田通りを、今日はゆっくり歩く。静かで、心地いい時間だった。
歩いていると、場所ごとに記憶が浮かんでくる。
あの頃の自分と、今の自分が、同じ道の上に重なっているような感覚。
やっぱり、このあたりはいい場所だなと思う。
またふらっと来たくなる、そんな一日だった。


